エムガルティとは?片頭痛の予防薬の効果・費用・副作用について専門医が解説

片頭痛の発作で日常生活に支障をきたし、つらい思いをされている方も多いのではないでしょうか。近年、片頭痛の予防に特化した新しい治療薬として「エムガルティ」が登場し、注目を集めていると言えます。
この記事では、片頭痛に悩む方に向けたエムガルティの効果や費用、副作用について詳しく解説していきます。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。
エムガルティとは

出典:日本イーライリリー株式会社 公式サイト(https://medical.lilly.com/jp/emgality)
エムガルティは、片頭痛発作の発症を抑えることを目的とした予防薬のひとつと考えられています。一般名は「ガルカネズマブ」と呼ばれ、日本イーライリリー株式会社が製造し、第一三共株式会社と共同で販売・情報提供が行われています。国内では2021年1月に製造販売承認を取得し、同年4月に発売されました。
従来の片頭痛治療薬は、痛みが起きてから対処するものが中心でしたが、エムガルティは月1回の皮下注射によって、頭痛の頻度や痛みの程度を減らす効果が期待されています。月に何日も頭痛に悩まされている方にとって、新たな希望となる治療法の選択肢と言えるかもしれません。
エムガルティを始めるにあたっては、「自分の頭痛が片頭痛かどうか」を適切に診断し、くも膜下出血などの重篤な疾患を除外するためにも、まずは頭痛外来や脳神経内科を受診していただくことが推奨されています。
片頭痛が起こる仕組み
片頭痛の原因は完全に解明されているわけではありませんが、頭の血管の周りにある「三叉神経(さんさしんけい)」が関与しているという説が有力と考えられています。
何らかのきっかけで三叉神経系が活性化すると、神経の末端から「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの神経ペプチドが放出されます。CGRPが血管や神経に作用し、痛みの情報が伝わりやすくなることで、片頭痛特有のズキズキとした頭痛や、吐き気、光・音への過敏などが引き起こされると考えられています。
CGRP(シージーアールピー)とは何か
CGRPは「Calcitonin Gene-Related Peptide」の略で、体内にもともと存在する神経ペプチドです。血管の調節や痛みの伝達などに関わっており、片頭痛の発症における重要な物質の一つとされています。

出典:日本イーライリリー株式会社 公式サイト(https://www.emgality-patient.jp/)
エムガルティは、CGRPそのものに結合し、CGRPが受容体に作用するのを妨げる「抗CGRP抗体」です。CGRPの働きを抑えることで、三叉神経系における痛みの伝達を抑え、片頭痛発作を起こりにくくします。
エムガルティの効果と有効率
エムガルティを使用することで、片頭痛の日数が減ったり、痛みが軽くなったりする方が多くいらっしゃいます。実際のデータをもとに解説していきます。
臨床試験(CGAN試験)の結果データ
国内で行われた反復性片頭痛の患者さんを対象とした臨床試験(CGAN試験)では、エムガルティの有効性が確認されたと報告されています。
この試験のデータによると、エムガルティを投与されたグループでは、月に平均して約3.6日、片頭痛の日数が減少したという結果が出ています。また、約半数(50%)の方で、ひと月あたりの片頭痛日数が半分以下に減ったという報告もあり、多くの方の生活の質の向上に寄与していると考えられています。
一方で、効果が限定的な方や、十分な改善が得られない方もいます。頭痛ダイアリーをつけながら、片頭痛日数や急性期治療薬の使用日数、日常生活への影響を評価することが重要です。
効果が出るまでの期間
エムガルティの効果が実感できるまでの期間には個人差がありますが、早い方では注射を開始した初月から、「頭痛の回数が減った」「痛みが軽くなった」と感じられる方もいらっしゃいます。
エムガルティは、血中濃度を早く安定させるために、初回に2本の注射を行うことが推奨されています。これによって、比較的早い段階から効果が現れることが期待されています。ただし、効果がゆっくりと現れる方もいらっしゃるため、少なくとも3ヶ月程度は治療を継続し、経過をみることが推奨されています。
発作間欠期(頭痛がない日)への効果
片頭痛に悩む方の中には、頭痛がない日(発作間欠期)であっても、「またいつ頭痛が来るか不安」と予期不安を抱えている方が少なくないと言われています。
エムガルティによって頭痛の頻度や重症度が下がることで、こうした「いつ痛くなるか分からない」という不安感が和らぐことも期待されています。結果として、仕事や趣味、家族との時間など、日常生活をよりアクティブに楽しめるようになったと感じる方も多くいらっしゃいます。発作時だけでなく、頭痛のない日常の質(QOL)を向上させる可能性も、このお薬のメリットと考えられています。
エムガルティの投与方法
エムガルティの投与は、皮下注射によって行われます。基本的なスケジュールや手順の目安は以下のようになるとされています。
- 初回:2本(240mg)を同時に皮下注射することが推奨されています。
- 2回目以降:1ヶ月(約30日)間隔で、1本(120mg)を皮下注射することが一般的です。
注射部位は、お腹、太もも、上腕部、お尻などが選ばれることが多いです。同じ部位に連続して注射する場合は、前回の注射箇所から少しずらすなどの工夫が望ましいと考えられています。
院内注射と在宅自己注射の違いは?
エムガルティの注射には、医療機関に通院して医師や看護師に注射してもらう「院内注射」と、患者さん自身が自宅で注射を行う「在宅自己注射」の2つの方法があります。
治療開始時は、医療機関において医師または医師の監督下で投与する必要があります。その後、医師が自己注射を行っても問題ないと判断し、患者さんが注射方法や副作用への対処について十分な指導を受けた場合には、在宅自己注射へ移行できます。
自己注射には、通院回数や待ち時間を減らしやすいというメリットがあります。仕事や家事で忙しい方にはメリットが大きいです。
エムガルティの費用
エムガルティは抗体医薬品であり、従来の内服予防薬と比べて費用が高くなる傾向があります。健康保険が適用されますが、自己負担割合によって窓口で支払う金額は異なります。ここでは目安となる金額について解説します。
3割負担の実費(初回・2回目以降)
2026年8月時点の薬価は、オートインジェクターが1本42,400円、シリンジが1本42,284円です。
3割負担の場合、薬剤費の目安は次のとおりです。
- 初回・2本投与:約25,400円
- 2回目以降・1本投与:約12,700円
※上記は薬剤費のみの目安であり、この他に初診料や再診料、注射手技料などの費用が加算されることがあります。実際の支払額は医療機関や検査内容によって変動することがあるため、受診時にご確認いただくことをおすすめします。
高額療養費制度・付加給付金制度の活用
同じ月に支払った保険診療の自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合には「高額療養費制度」の対象となることがあります。エムガルティの費用だけでは上限に達しない場合でも、同じ月に受けた他の保険診療の費用と合算できることがあります。
また、健康保険組合によっては、法定の高額療養費制度に加えて、自己負担額をさらに軽減する「付加給付制度」が設けられている場合があります。
制度の有無や上限額は、年齢、所得、加入している保険によって異なるため、ご自身が加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村などにご確認ください。
エムガルティの副作用と注意点
エムガルティは比較的副作用の少ない薬ですが、注射部位反応やアレルギー反応などが生じることがあります。
よくある副作用
エムガルティの副作用として比較的多く報告されているのが、注射をした部分に起こる「注射部位反応」とされています。
臨床試験等のデータでは、注射部位の紅斑(赤み)が約14.8%、腫れが約10.4%、痛みが約10.1%、かゆみが約8.7%など見られることが報告されています。
これらは注射後数日以内に現れることが多いですが、ほとんどの場合は軽度であり、数日で自然に落ち着いていく傾向があると考えられています。もし赤みや腫れが長引く場合や、痛みが強い場合には、担当の医師にご相談ください。その他の副作用として、めまいや便秘などが生じる方もいらっしゃいますが、その頻度は1%未満と非常にまれであると報告されています。
注意点
エムガルティを使用するうえで、いくつか気をつけていただきたい点があります。
ごくまれなケースとして、注射後にアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が起こる可能性も否定できないとされています。そのため、息苦しさ、全身の強い発疹、唇や顔の腫れなどの異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診することが推奨されています。
妊娠中または妊娠している可能性がある方には、治療によるメリットがリスクを上回ると判断された場合にのみ使用します。授乳中の方についても、授乳を続けるか、治療を続けるかを主治医と相談する必要があります。
妊娠を希望している方は、ご自身の判断で中止するのではなく、妊娠を考えている段階から主治医にご相談ください。
エムガルティの適応条件
エムガルティは片頭痛の方全員がすぐに使えるわけではなく、一定の基準を満たした方が対象となることが多いです。自分が対象になるか、以下のチェックリストを目安にご確認いただくことができます。
- 過去3ヶ月間、平均して月に4日以上片頭痛が起こっている
- これまでの片頭痛予防薬(飲み薬など)では十分な効果が得られなかった、あるいは副作用で続けられなかった
- 日常生活や仕事、学校生活に大きな支障をきたしている
- 医師の診察やMRI検査などで、重篤な疾患を除外するために別の頭痛ではないと診断されている
最終的な判断は専門医が行うことになりますので、まずは頭痛外来などでご相談いただくことをおすすめします。
エムガルティはいつまで続ける?やめたらどうなるか
エムガルティを始めた後、どのくらいの期間続けるべきか、あるいはやめたらどうなるかについて不安に思われる方もいらっしゃいます。
効果判定のタイミング
治療を開始してから、およそ3ヶ月を目安に効果の判定を行うことが一般的とされています。この期間で、頭痛の頻度が減ったか、痛みの程度が軽くなったか、急性期治療薬(痛み止め)の使用回数が減ったかなどを医師と一緒に確認することが多いです。
効果が十分に感じられる場合は、そのまま治療を継続することが推奨されますが、もし効果が実感できない場合は、治療の中止や別のお薬への切り替えを検討することがあります。
中止を検討するケース
エムガルティの中止を検討するケースとしては、以下のような状況が考えられます。
- 3〜6ヶ月継続しても、期待したほどの効果が得られない場合
- 副作用(強い注射部位反応やアレルギーなど)によって、治療の継続が難しいと判断された場合
- 長期間にわたって片頭痛が良好にコントロールされ、頭痛がない状態が続いている場合
- 妊娠や授乳を希望される場合
- 経済的な負担などから継続が難しい
ご自身の判断で急にやめるのではなく、必ず主治医と相談しながら決定していくことが重要と言えます。
やめた後に片頭痛は戻るのか
エムガルティの投与を中止した場合、体内からお薬の成分が徐々に減っていくため、数ヶ月かけて元の片頭痛の頻度や強さに戻ってしまう方もいらっしゃいます。
一方で、治療によって「痛みの悪循環」が断ち切られたことで、お薬をやめた後も頭痛が少ない状態を維持できる方も少なからずいらっしゃると報告されています。やめた後の経過には個人差があるため、中止後も定期的に頭痛ダイアリーなどをつけながら、体調の変化に注意を払うことが望ましいと考えられています。
再開はできるのか
もしエムガルティを一度中止した後、再び片頭痛が悪化してしまった場合でも、医師の判断によってエムガルティの投与を再開することは可能と考えられています。
再開した場合でも、初回投与時と同様に効果が期待できるケースが多いとされていますが、再開のタイミングや初回投与量(2本投与するかどうか)については、期間の空き具合などを考慮して医師が判断することになります。不安な点があれば、いつでも主治医にご相談ください。
エムガルティ・アイモビーグ・アジョビの違い
片頭痛の予防を目的とした新しい注射薬(CGRP関連製剤)には、エムガルティの他に「アイモビーグ」と「アジョビ」があります。それぞれの特徴の違いをまとめました。
| 商品名 | 一般名 | 標的(ターゲット) | 投与スケジュール |
|---|---|---|---|
| エムガルティ | ガルカネズマブ | CGRP (物質そのもの) |
初回2本、以降月1回1本 |
| アジョビ | フレマネズマブ | CGRP (物質そのもの) |
月1回1本 または 3ヶ月に1回3本 |
| アイモビーグ | エレヌマブ | CGRP受容体 (受け手側) |
月1回1本 |
【在宅自己注射】
いずれの薬も、医師が適切と判断し、注射方法などの指導を受けた場合には、在宅自己注射へ移行できます。
どのお薬が適しているかは、患者さんのライフスタイルや痛みの頻度、過去の治療歴などによって異なると考えられています。例えば、エムガルティは初回に2本注射することで早く血中濃度を上げる特徴がありますし、アジョビは12週間に1回の投与方法も選択できるため、注射の回数を減らしたい方に適している場合があります。医師と相談して、ご自身に合ったお薬を選ぶことが大切と言えます。
まとめ
エムガルティは、片頭痛の原因物質であるCGRPに直接働きかけ、頭痛の発作を予防することが期待できる新しい治療の選択肢と考えられています。
月に何度も激しい頭痛に悩まされ、「痛み止めが手放せない」「大事な予定をキャンセルしてしまう」といったつらい思いをされている方にとって、生活の質(QOL)を大きく改善する可能性を秘めたお薬と言えるかもしれません。一方で、すべての方に効果があるわけではなく、注射部位の痛みや赤み、まれに重篤なアレルギー反応が起こることがあります。費用も従来の内服予防薬より高いため、効果、副作用、経済的な負担を含めて治療方針を検討することが大切です。
片頭痛は、適切な診断と治療によって、発作の回数や生活への支障を減らせる病気です。「痛み止めを頻繁に使用している」「頭痛のために仕事や予定を休むことがある」「現在の治療では十分に改善しない」という方は、一人で我慢せず、頭痛外来や専門医にご相談ください。
よくある質問
エムガルティによる治療を検討される方からよく寄せられる質問についてまとめました。
もし予定していた日に注射を忘れてしまった場合は、気づいた時点で速やかに投与し、それ以降はその日から1ヶ月間隔で投与していくことが推奨されています。自己判断で2回分をまとめて打つようなことは避けていただくようお願いします。
エムガルティは皮下注射であり、針を刺す時やお薬が入る時に「チクッ」とした痛みや、押されるような痛みを感じる方もいらっしゃいます。ただし、針は非常に細いものが使われており、痛みの感じ方には個人差がありますが、我慢できないほどの強い痛みを感じる方は少ないと考えられています。
一般的に、3ヶ月程度継続しても片頭痛の頻度や症状に改善が見られない場合は、お薬が体質に合っていない可能性も考えられます。その場合は、漫然と続けるのではなく、他のお薬への切り替えや治療方針の見直しを医師と相談することが望ましいと言えます
エムガルティで十分な効果が得られなかったり、副作用が出たりした場合、アジョビやアイモビーグといった別のCGRP製剤に切り替えることで効果が見られるケースもあると報告されています。切り替えのタイミングや方法は主治医の判断が必要となりますので、お気軽にご相談ください。
お気軽にお問い合わせください
「これって受診したほうがいいのかな?」と迷う段階でも大丈夫です。
症状がはっきりしていなくても、不安や違和感があればご相談ください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。