脳卒中
脳卒中は、ある日突然発症し命や後遺症に大きく関わる重大な病気です。
日本人の約4人に1人が発症すると言われています。
頭痛やめまい、手足のしびれなどの症状に不安を感じている方や、ご家族の異変に気づいた方もいるでしょう。
そのような方へ向けて、脳卒中の症状や原因、受診の目安、予防まで分かりやすく説明しますので、参考にしてください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。
まずは脳卒中かチェック(FAST)
脳卒中を疑ったら、まずは下記のチェックを行いましょう。脳卒中の治療は時間が命です。

脳卒中とは
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部に十分な血液が届かなくなり、脳細胞が障害を受ける病気の総称です。
発症すると、まひや言語障害、意識障害など、障害を受けた脳の部位に応じた症状が現れ、場合によっては命に関わることもあります。
脳卒中は大きく、血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類されます。
医療の進歩により死亡率は低下していますが、後遺症が残り日常生活に影響するケースも多いため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。

脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が血栓などによって詰まり、血液が流れなくなることで脳組織が障害を受ける病気です。
運動まひやしびれ、言葉が出にくい、視野の異常などの症状が突然現れることが特徴です。特に重要なのは発症から治療までの時間であり、脳梗塞では1分間治療が遅れるごとに約190万個もの脳細胞が失われるとされています。
そのため、症状に気づいた時点ですぐに医療機関を受診することが、後遺症を軽減し回復の可能性を高めるうえで極めて重要です。
早期治療が予後を大きく左右する疾患といえるでしょう。
脳出血
脳出血は、脳内の血管が破れて出血し、血液が脳組織を圧迫することで障害が生じる病気です。
主な原因としては高血圧による血管への負担が挙げられ、長年の生活習慣が発症に関係することも少なくありません。
突然の頭痛や吐き気、手足のまひ、意識障害などがみられることがあり、出血量や部位によって症状の重さは異なります。
発症後は出血の拡大とともに脳へのダメージが進行するため、早期の診断と適切な治療が重要です。
血圧管理や生活習慣の改善は、脳出血の予防において大切なポイントとなります。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面を覆うくも膜の中の空間に出血が起こる病気で、多くは脳動脈瘤の破裂が原因とされています。
発症時には「今まで経験したことのない激しい頭痛」が突然現れることが特徴で、吐き気や嘔吐、意識障害を伴う場合もあります。重症化しやすく、命に関わることもあるため、症状を感じた場合は速やかな救急受診が不可欠です。
また、一命を取り留めた場合でも再出血や合併症のリスクがあるため、専門的な治療と慎重な経過観察が必要となります。
突然の激しい頭痛は重要な警告サインといえるでしょう。
脳動脈瘤とは?
脳動脈瘤とは、脳の血管の一部がこぶのように膨らんだ状態のことです。成人の約3-4%に脳動脈瘤が存在すると言われています。
脳卒中の死亡者数・死亡率について
脳卒中は日本人の主要な死亡原因の一つであり、依然として社会的影響の大きい疾患です。厚生労働省の人口動態調査によると、2020年には脳卒中(脳血管疾患)による死亡者数は約10万3,000人で、全死亡の約7.5%を占めています。死因順位としては第4位に位置しており、がんや心疾患に次ぐ重要な健康課題です。
また、脳卒中の中では脳梗塞による死亡が半数以上を占めるとされています。さらに、入院後30日以内の死亡率は脳梗塞で約4.4%、脳出血で約16.0%、くも膜下出血で約26.6%と報告されており、タイプによって予後が大きく異なる点も特徴です。
これらのデータからも、早期発見と迅速な治療の重要性が理解できます。

脳卒中の症状
脳卒中の症状は、障害を受けた脳の部位によって異なりますが、いずれも突然現れることが特徴です。
代表的な症状として、顔や手足の片側のまひ・しびれ、ろれつが回らない、言葉が理解できないといった言語障害、片目が見えにくい・視野が欠けるなどの視覚障害が挙げられます。また、激しい頭痛やめまい、ふらつき、意識障害がみられる場合もあります。
これらの症状が一時的に改善することもありますが、脳卒中の前触れである可能性もあるため軽視は禁物です。
少しでも異変を感じた場合は、速やかに医療機関へ相談・受診することが重要です。

脳卒中の前兆を見逃さないでください!
脳卒中は突然発症することが多い一方で、前兆となる症状が現れる場合もあります。
代表的なのが一過性脳虚血発作(TIA)で、一時的に手足のまひやしびれ、ろれつが回らない、言葉が出にくい、視野が欠けるといった症状が出現し、短時間で改善するのが特徴です。
しかし、症状が消えたからといって安心はできず、本格的な脳卒中が近い将来起こる可能性があります。
また、突然の強い頭痛やめまい、ふらつきなども重要なサインです。
これらの異変に気づいた場合は様子を見るのではなく、早めに医療機関へ相談し、適切な検査や評価を受けることが大切です。
脳卒中の原因
脳卒中の原因は種類によって異なりますが、共通して血管の障害が関係しています。
脳梗塞では動脈硬化や心房細動などにより血栓が形成され、脳の血管が詰まることで発症します。
一方、脳出血やくも膜下出血では、高血圧や血管の弱化、動脈瘤の破裂などによって血管が破れることが主な原因です。
また、糖尿病や脂質異常症、喫煙、過度の飲酒、肥満、運動不足といった生活習慣も動脈硬化を進行させ、脳卒中のリスクを高める要因となります。
複数の危険因子が重なることで発症リスクはさらに上昇するため、日頃からの生活習慣管理が重要です。

脳卒中の診断
脳卒中が疑われる場合、まず医師は症状や発症時刻、既往歴を聞き取り、神経学的な診察を行います。
その後、CT検査やMRI検査で脳梗塞や脳出血の有無を確認します。
頭部CTは発症早期の脳出血の診断に有用です。頭部MRIは脳出血や発症間もない脳梗塞、CTではわからないような小さな病変の診断に有用です。脳血管の病変の診断にも威力を発揮します(MRA)。
さらに、頸動脈エコーや心臓由来の原因を調べる心電図、必要に応じて血管造影検査なども併用し、総合的な診断が進められます。
これらの検査によって、どのタイプの脳卒中か、どの部位が障害されているかを把握し、最適な治療方針が決定されます。
脳卒中の治療
脳卒中の治療は種類によって異なります。
脳梗塞では発症早期に血栓を溶かすt-PA療法や血管内治療で血流再開を目指します。
脳出血では血圧管理や止血治療、必要に応じて血腫除去手術が行われます。
くも膜下出血では動脈瘤を閉鎖するクリッピング術やコイル塞栓術が実施され、早期治療が予後を左右します。

脳梗塞の治療
脳梗塞の治療では、詰まった血管をできるだけ早く再開通させることが重要です。
発症から約4.5時間以内であれば、血栓を溶かすt-PA(血栓溶解療法)が行われ、血流の回復によって症状が大きく改善する可能性があります。
また、太い血管が閉塞している場合には、カテーテルを用いて血栓を除去する血管内治療が選択されることもあります。
さらに、抗凝固薬や抗血小板薬などを用いた薬物療法も実施されます。
これらの治療は時間との勝負であり、迅速な搬送と早期治療が後遺症の軽減に直結します。
脳出血の治療
脳出血の治療では、出血の拡大を防ぎ脳へのダメージを最小限に抑えることが重要です。
原因として高血圧が関与することが多いため、まず降圧薬を用いて血圧を適切に管理します。
また、出血を抑える止血薬や、脳の腫れ(浮腫)を軽減する薬剤が投与されることもあります。
さらに、出血量が多く脳が強く圧迫されている場合には、開頭して血腫を取り除く手術が行われることがあります。
症状や出血の程度に応じて治療方針が決定され、早期の対応が生命予後や後遺症の程度に大きく影響します。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血の多くは脳動脈瘤の破裂が原因で起こるため、再出血を防ぐ目的で動脈瘤を閉鎖する治療が中心となります。
代表的な方法として、開頭して動脈瘤の根元をクリップで挟む開頭クリッピング術と、カテーテルを用いて動脈瘤内にコイルを詰めて閉塞させる血管内コイル塞栓術があります。
これらに加えて、血圧管理や安静、合併症予防などの全身管理も重要です。
病態や全身状態を踏まえて治療法が選択され、早期に適切な処置を行うことで再出血や後遺症のリスク低減が期待されます。
脳卒中の予防法
脳卒中は生活習慣や基礎疾患の管理によって予防できる可能性が高い疾患です。
特に最大の危険因子とされる高血圧のコントロールは重要で、降圧治療により発症率が30〜40%減少することが報告されています。
また、糖尿病や脂質異常症、心房細動などの治療・管理も脳卒中予防に不可欠です。
さらに、禁煙や過度な飲酒を避けること、塩分を控えた食事や適度な運動、体重管理といった生活習慣の見直しも発症リスクの低減につながります。
日頃から健康診断を受け、自身の危険因子を把握して継続的に管理することが脳卒中予防の基本となります。

まとめ
脳卒中は脳の血管障害によって突然発症し、命や生活の質に大きく影響する疾患です。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血のいずれも早期発見と迅速な治療が重要であり、症状や前兆に気づいた際は迷わず医療機関を受診することが大切です。
また、高血圧をはじめとした危険因子の管理や生活習慣の改善により、発症リスクを下げることも可能です。
日頃から正しい知識を持ち、自身や家族の健康を守る行動を心がけましょう。
お気軽にお問い合わせください
「これって受診したほうがいいのかな?」と迷う段階でも大丈夫です。
症状がはっきりしていなくても、不安や違和感があればご相談ください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。