群発頭痛とは?目の奥の激痛の原因や治療法、予防法について解説

群発頭痛は、片側の目の奥をえぐるような激痛が一定期間にわたって連日のように起こる頭痛疾患と考えられています。20〜40歳代の男性に多くみられる傾向があり、夜間や明け方に涙や鼻水を伴う耐え難い痛みが現れることが特徴です。
この記事では、つらい発作時の対処法から予防策までわかりやすく解説します。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。
群発頭痛とは
群発頭痛は、一次性頭痛(脳腫瘍などの他の病気が原因ではない頭痛)のなかでも、非常に強い痛みを伴うことがある頭痛疾患とされています。
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」に分類されています。典型的には、片側の目の周囲やこめかみに非常に強い痛みが起こり、同じ側に涙、目の充血、鼻水、鼻づまりなどの自律神経症状を伴います。
群発頭痛は特徴的な症状を示すため、問診によって診断できることも多い疾患です。一方で、まれに脳や下垂体などの病気によって群発頭痛に似た症状が起こることもあります。初めて経験する激しい頭痛や、これまでとは異なる症状を伴う場合には、必要に応じてMRIなどの画像検査を行い、二次性頭痛を除外することが重要です。
群発頭痛の主な症状
群発頭痛の症状には個人差があるものの、主に以下のような特徴的な傾向が知られています。
- 片側の目の奥などに生じる強烈な痛み
- 痛む側と同じ側の目や鼻に現れる自律神経症状
- 一定の周期・きまった時間帯(夜間など)に起こりやすい
発作の現れ方や頻度には人それぞれ違いがありますが、日常生活に著しい支障をきたすケースが多いと考えられています。
片側の目の奥の強烈な痛み
痛みが現れる主な部位は、片側の目の奥からこめかみ周囲にかけてです。「目をえぐられるような痛み」や「焼け火箸を刺されたような激痛」と表現されることもあります。
1回の発作の持続時間は15分〜3時間程度(多くは1〜2時間程度)とされており、治療を行わない場合は1日に1〜数回ほどの頻度で発作が繰り返されることがあります。
片頭痛のように暗い部屋でじっと静養したくなる症状とは異なり、あまりの痛みの強さからじっとしていられず、体を揺さぶったり室内を歩き回ったりしてしまう行動(落ち着きのない状態)がみられる方もいらっしゃいます。
痛む側の目や鼻に出る自律神経症状
頭痛が起こっている側と同じ側の顔面に、多様な自律神経症状が伴うことがあります。代表的な症状としては以下のものが挙げられます。
- 目の充血・流涙(涙が出る)
- 鼻づまり・鼻水
- まぶたの腫れや下がり(眼瞼下垂)
- 顔面の発汗・瞳孔の縮小(縮瞳)
これらの症状は、三叉神経や自律神経が過剰に刺激されることで生じると考えられており、頭痛発作が治まると自然に回復していく傾向があります。症状の出方や組み合わせには個人差があります。
一定の周期・時間帯に起こる
群発頭痛の大きな特徴のひとつに、発作が「一定の周期」や「特定の時間帯」に集中して起こる点が挙げられます。
数週間から数ヶ月間にわたって連日のように頭痛発作が繰り返される期間があり、この時期は一般に「群発期」と呼ばれます。群発期においては、毎日ほぼ決まった時間帯(特に夜間や睡眠中、明け方など)に激しい痛みで目が覚めてしまうというパターンが多く報告されています。こうした強い時間的な規則性には、体内時計を調節している視床下部が関係していると考えられています。
「群発期」について
群発期の長さには個人差がありますが、一般的には1〜2ヶ月程度続くことが多いとされています。群発期が過ぎると、発作が全く起こらない「寛解期」に入り、数ヶ月から数年間にわたって症状が現れない状態が続くこともあります。
また、春先や秋口など「季節の変わり目」に群発期が訪れやすいと感じる方もいらっしゃいます。睡眠に入って1〜2時間後など決まったタイミングで発作が起きやすい日内変動も知られていますが、周期や期間の長さは体質や環境によって様々です。
群発頭痛の原因
群発頭痛がなぜ発症するのかについては、現代の医学においても完全には解明されていません。
現在では、脳の「視床下部」と、痛みを伝える「三叉神経」、さらに自律神経系を結ぶネットワークが重要な役割を担っていると考えられています。
視床下部は睡眠や体温、ホルモン分泌、体内時計などを調節する部位です。群発頭痛では発作が毎日ほぼ同じ時間に起こったり、一定の季節に集中したりすることから、視床下部を中心とした概日リズムの異常が病態に関与していると考えられています。
さらに、発作時には三叉神経と副交感神経系が活性化し、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドが関与することも知られています。
以前は「血管が拡張することが頭痛の原因」と説明されることもありましたが、現在では血管の変化だけで群発頭痛を説明することはできず、脳・三叉神経・自律神経系を含む複雑な神経ネットワークの異常として理解されています。
群発頭痛になりやすい人の特徴
群発頭痛は、統計的に20〜40歳代の男性に多くみられる傾向があると報告されています。女性に比べて男性の発症率が高いとされていますが、近年では女性の患者様も一定数いらっしゃることが分かっています。

また、群発頭痛の患者さんでは一般人口と比べて喫煙歴や飲酒歴が多いという報告があります。ただし、喫煙そのものが群発頭痛を発症させる原因であることが証明されているわけではありません。
一方、群発期のアルコール摂取は発作を誘発する代表的な要因として知られています。そのため、群発期に入ったら飲酒を控えることが重要です。
群発頭痛セルフチェックリスト
ご自身の頭痛症状に不安がある方は、以下の項目に当てはまるものがあるか確認してみましょう。
- 片側の目の奥やこめかみに、耐えがたい激痛が起こることがある
- 痛む側の目から涙が出たり、充血・鼻水・まぶたの腫れを伴うことがある・痛みのあまり、じっとしていられず歩き回ってしまうことがある
- 1回の痛みが15分〜3時間程度で治まることが多い
- 毎日ほぼ決まった時間帯(夜間や睡眠中など)に痛みが起こる
※これらは自己チェックの目安です。脳の重篤な疾患を除外するためにも、専門医による適切な診察・検査を受けることをおすすめします。
群発頭痛と片頭痛の違い
群発頭痛と片頭痛は、いずれも片側の頭部に強い痛みが現れることがあるため混同されやすいですが、症状の特徴や発作中の行動などには明確な違いがあると考えられています。
大きな違いのひとつが「発作中の行動」です。片頭痛では光や音に過敏になり、暗く静かな部屋でじっと横になっていたいと感じる方が多いのに対し、群発頭痛では激しい痛みから落ち着きがなくなり、室内を歩き回ったり体を揺さぶったりしてしまう方が多くいらっしゃいます。
群発頭痛と片頭痛の主な比較表
| 項目 | 群発頭痛 | 片頭痛 |
|---|---|---|
| 痛みの部位 | 主に片側の目の奥〜こめかみ | 片側(または両側)のこめかみ・頭部 |
| 痛みの性質 | えぐられるような耐え難い激痛 | ズキズキと脈打つような痛み |
| 持続時間 | 15分〜3時間程度 | 4時間〜72時間程度 |
| 随伴症状 | 目の充血・流涙、鼻水など自律神経症状 | 吐き気・嘔吐、光・音過敏など |
| 発作中の行動 | じっとしていられず動き回る | 静かな場所で安静にしてじっとしていたい |
| 性別傾向 | 男性に多い傾向 | 女性に多い傾向 |
※自己判断のみに頼らず、脳神経外科や頭痛外来で専門的な鑑別を受けることが大切です。
群発頭痛の治療法
群発頭痛の治療は、まさに今起こっている痛みを和らげる「急性期治療」と、群発期における発作の頻度や程度を抑える「予防治療」の2つに大別されます。
急性期治療(発作時)
目の奥をえぐるような激しい発作に見舞われている際、一般的な市販の鎮痛薬(NSAIDs)では十分な効果が得られないケースが多いとされています。発作時には、速やかに痛みを抑えるための専門的な処置が検討されます。
酸素吸入療法
群発頭痛の発作に対する主要な治療法のひとつとして、高濃度酸素吸入療法が挙げられます。
専用の医療用フェイスマスクを用い、純度100%の酸素を毎分7〜15リットルほどの流量で15〜20分程度吸入する方法です。酸素が群発頭痛を改善する詳しい仕組みは完全には解明されていませんが、三叉神経・自律神経系の活動を抑える作用などが関係すると考えられています。
酸素吸入療法は薬剤のような全身的副作用が少なく、安全性が比較的高いため使いやすい治療法と考えられています。医療機関での実施に加えて、一定の診断基準を満たせば、医師の指導と手続きのもと自宅に機器を設置する「在宅酸素療法(HOT)」を保険診療内で利用できる場合もあります。夜間や早朝に発作が頻発する方にとって貴重な選択肢となりますが、酸素は支燃性があるため火気厳禁のルールを守って安全に使用することが求められます。
スマトリプタン自己注射・点鼻薬
急性期治療のもうひとつの重要な柱として、トリプタン系薬剤である「スマトリプタン」を用いた治療があります。
日本国内において群発頭痛の発作に対し保険適用が認められているものとして、スマトリプタンの自己注射キットが存在します。発作の兆候を感じた際や発作初期に患者様ご自身で太ももなどに皮下注射を行うもので、薬成分が速やかに吸収されるため、多くの場合15分以内に効果が現れ始めるとされています。非常に痛みが強い群発頭痛において即効性が期待できる選択肢と考えられています。なお、1日の使用回数や投与量には上限が定められているため、医師の指示を守って使用する必要があります。
一方、スマトリプタン点鼻薬についても海外では群発頭痛に対する有効性が報告されていますが、日本では群発頭痛に対する保険適用はありません。また、皮下注射と比較すると効果が現れるまでに時間がかかるため、日本における群発頭痛の急性期治療では、スマトリプタン自己注射と高濃度酸素吸入が中心となります。
なお、スマトリプタンは虚血性心疾患や脳血管障害などがある方には使用できない場合があります。治療を開始する前に、既往歴や心血管系のリスクについて医師が確認します。
予防治療(非発作時)
群発期には、発作がほぼ毎日のように繰り返されることがあるため、急性期治療だけでは十分とはいえません。
群発期に入ったら、急性期治療と並行して、発作回数を減らすための予防治療を行うことが重要です。日本頭痛学会でも、群発期には予防療法を組み合わせることが推奨されています。
ステロイド
プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドは、群発期の初期に発作を速やかに抑える目的で使用されることがあります。
ステロイドは比較的早く効果が現れることが期待できるため、予防薬であるベラパミルの効果が十分に現れるまでの「橋渡し」として、短期間使用することがあります。日本ではプレドニゾロンは群発頭痛に対して薬事承認された効能ではありませんが、保険診療上の適応外使用が認められています。
一方、ステロイドを長期間使用すると、血糖値の上昇、血圧上昇、不眠、胃腸症状、感染症リスクの増加、骨粗鬆症などの副作用が問題となるため、通常は長期にわたって継続する薬ではありません。
使用量や投与期間については患者さんの症状や既往歴によって異なるため、医師が状態を確認しながら調整します。
ベラパミル
ベラパミルは、本来は頻脈性不整脈などに使用されるカルシウム拮抗薬ですが、群発頭痛の予防薬としても広く用いられています。日本国内においては適応外使用として認められており、第一選択の予防薬として検討されることが多いとされています。発作の頻度や強さを軽減する効果が期待されますが、徐脈や血圧低下などの副作用に配慮し、定期的な観察のもとで服用を行う必要があります。
エムガルティ
エムガルティは、頭痛発作に関与するCGRPの働きを抑える抗体製剤です。海外の臨床試験等では反復性群発頭痛に対する発作抑制効果が報告されています。ただし、現在日本国内においてエムガルティが保険承認されている対象は「片頭痛の発作発現抑制」であり、群発頭痛への使用については保険適用外や研究段階の情報として扱われます。
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群発頭痛を繰り返さないためにできること
毎年あるいは周期的に訪れる群発頭痛に対し、「またあの激痛が来るのではないか」と不安を感じている方も多くいらっしゃいます。群発期における発作を誘発しないためには、以下のような日常生活での配慮が役立つと考えられています。
| 気をつけたいこと | 理由・ポイント |
|---|---|
| 群発期中の禁酒 | アルコール摂取は高い確率で発作を誘発するとされているため、群発期中は禁酒することが極めて大切です。 |
| 規則正しい睡眠 | 群発頭痛は睡眠や体内時計との関連が強い疾患です。睡眠時間を大きく変えず、できるだけ規則正しい生活を心がけましょう。 |
| 長風呂やサウナを避ける | 体を急激に温めると血管が拡張し、痛みが誘発されることがあります。ぬるめのお湯やシャワー程度にとどめることが望ましいとされています。 |
| 気圧変化への注意 | 飛行機への搭乗、登山などの環境変化をきっかけに発作を経験する方もいますが、すべての群発頭痛患者さんが避けなければならないわけではありません。旅行中に発作が起こる可能性がある場合には、事前に急性期治療薬を準備しておくことが重要です。 |
また、喫煙者に群発頭痛が多いことは報告されていますが、禁煙によって群発頭痛そのものが治ると証明されているわけではありません。ただし、健康上の観点から禁煙は推奨されます。
脳神経外科
脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
自分の発作が「いつ、どのような状況で起きたか」を頭痛ダイアリーに記録しておくと、ご自身の誘因や群発期のパターンを把握するのに役立ちます。
当院の頭痛外来について
当院の頭痛外来では、頭痛のタイプを正確に見極め、くも膜下出血や脳腫瘍などの重篤な疾患を除外するために、必要に応じてMRIなどの画像精査を実施いたします。
急性期の高濃度酸素吸入やスマトリプタン自己注射の処方から、群発期を乗り切るための予防治療まで、患者様お一人おひとりのライフスタイルや体質に合わせた診療をご提案いたします。激しい頭痛にお悩みの方は、我慢なさらずお気軽にご相談ください。
まとめ
群発頭痛は、片側の目の奥などに耐えがたい激痛が一定期間集中して起こる頭痛疾患であり、自律神経症状や強い周期性を伴うことが特徴と考えられています。
痛みの強さから日常の暮らしに大きな影響を与えることがありますが、適切な専門医を受診することで、高濃度酸素吸入やスマトリプタン自己注射といった急性期治療、ベラパミルをはじめとする予防治療を組み合わせた対処が可能となります。
また、重篤な脳疾患を除外するためにも、まずは脳神経外科や頭痛外来での精査を受けることが重要とされています。発作期のつらい痛みにお悩みの方も、予防をお考えの方も、ぜひご相談ください。
よくある質問
群発頭痛を根本的に治し、今後の発作を完全に起こらなくする治療法は、現時点では確立されていません。
ただし、反復性群発頭痛では、群発期が終わると数カ月から数年間にわたって頭痛がまったく起こらないこともあります。また、適切な急性期治療と予防治療を組み合わせることで、発作の痛みや回数を大きく減らせる方も少なくありません。
「治らない病気」と考えて痛みを我慢するのではなく、群発期をできるだけ短く、負担を少なく乗り切ることが治療の重要な目標です。
ロキソプロフェンなどの一般的な鎮痛薬やNSAIDsは、群発頭痛に対して十分な効果が期待できないことがほとんどです。群発頭痛は痛みが急激に強くなり、発作時間も比較的短いため、内服薬が効き始める前に痛みがピークに達してしまうことも理由のひとつです。日本頭痛学会でも、NSAIDsの群発頭痛に対する有効性は確立されていないとしています。
漢方薬についても、群発頭痛の発作を止めたり予防したりする有効性について十分な医学的根拠は確立していません。群発頭痛が疑われる場合には、高濃度酸素吸入やスマトリプタン皮下注射など、効果が確認されている治療を優先することが重要です。
妊娠中・授乳中は使用できる薬剤に制限があるため、治療内容を個別に検討する必要があります。
高濃度酸素吸入は薬剤を使用しないため、妊娠中の群発頭痛において重要な急性期治療の選択肢となります。一方、スマトリプタンや予防薬については、妊娠週数、症状の程度、治療による利益とリスクを踏まえて医師が判断します。
妊娠中または妊娠を希望している場合には、自己判断で薬を開始・中止せず、必ず主治医にご相談ください。
群発頭痛には複数の治療法があり、発作の頻度や重症度、既往歴、使用できる薬剤、在宅酸素療法を導入できるかどうかなどによって、治療方針が異なることがあります。
また、群発頭痛は比較的患者数が少ない疾患であるため、医療機関によって診療経験に差があることもあります。
治療方針について疑問や不安がある場合には、頭痛専門医が在籍する医療機関や頭痛外来で、セカンドオピニオンを受けることも選択肢のひとつです。
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症状がはっきりしていなくても、不安や違和感があればご相談ください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。