頭部外傷
頭を強く打ったあと、「このまま様子を見ていて大丈夫なのか」「すぐ病院に行くべきなのか」と不安になる方は少なくありません。
頭部外傷は軽い打撲のように見えても、時間が経ってから症状が悪化することがあります。
ここでは、頭部外傷の基礎知識から自宅での対処法、受診の目安までを分かりやすく解説し、今まさに心配している方の判断材料となる情報をお伝えします。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。
頭部外傷とは
頭部外傷とは、転倒や衝突、事故などによって頭部に外力が加わり、頭の皮膚・骨・脳に損傷が生じた状態を指します。
代表的なものには、たんこぶや切り傷といった軽度のものから、脳震盪、頭蓋骨骨折、脳挫傷、頭蓋内出血など命に関わる重篤な状態まで幅広く含まれます。
外見上は軽そうに見えても、脳の内部では出血や腫れが進行しているケースもあり、受傷直後に症状がなくても安心はできません。
特に頭は生命維持に重要な中枢である脳を守る部位のため、頭部外傷は「軽症に見えても注意が必要なケガ」と理解しておくことが重要です。

頭を打ったら何科を受診するべきか
頭を打った場合、基本的には脳神経外科の受診が最も適しています。
脳神経外科は、脳・脊髄・神経を専門に診る診療科であり、頭部外傷によって起こる脳震盪や頭蓋内出血、脳挫傷などを専門的に評価できます。
頭痛、吐き気、意識がぼんやりする、物忘れがひどいといった症状がある場合は、脳の内部に異常が起きている可能性も否定できません。
脳神経外科ではCTやMRIなどの画像検査を用いて、外見からは分からない脳の状態まで確認できます。
「少し打っただけ」と自己判断せず、頭を打って不安がある場合は、早めに脳神経外科を受診することが安心と安全につながります。
頭をぶつけた後に注意する症状
頭部打撲後、以下の症状が現れた場合は、できるだけ早く脳神経外科を受診してください。

- 吐き気があり嘔吐した
- ぐったりしている、ぼんやりしている、フラフラしている
- 意識を失った、記憶が不確か
- けいれん・ひきつけを起こした
- 言葉や会話に異常がある
- 頭皮が裂けている、傷からの出血が止まらない
頭を打った時の注意点
頭を打った直後は症状が軽くても安心せず、慎重に経過を観察することが重要です。
特に頭部外傷後から1〜2日は慎重に様子をみることが大切で、この間に頭痛の悪化、吐き気や嘔吐、強い眠気、意識がぼんやりする、手足のしびれや言葉が出にくいなどの症状が現れることがあります。
また、飲酒や激しい運動、長時間の入浴は避け、できるだけ安静に過ごしましょう。
小さなお子さんや高齢者は症状をうまく訴えられない場合もあるため、家族が様子を見守ることが大切です。
少しでも異変を感じたら、早めに医療機関を受診してください。

子どもが頭をぶつけた場合の注意点
子どもが頭をぶつけた場合、見た目に大きなケガがなくても注意が必要です。
特に小さなお子さんは症状をはっきりと訴えられないので、特に注意してください。
頭痛や吐き気を言葉で説明できないことも多く、眠りがちになる、ぼんやりしている、ミルクや食事を嫌がるなどの変化がサインとなることがあります。
「いつもと違う」「機嫌が悪い」と感じたら受診してください。
受傷後1〜2日はしっかり様子を観察し、少しでも異変があれば早めに医療機関へ相談することが大切です。
70歳以上の高齢者の場合の注意点
70歳以上の高齢者が頭を打った場合は、特に慎重な対応が必要です。
高齢になると脳がやや萎縮し、軽い外傷でも頭蓋内出血を起こしやすくなります。
また、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している方は出血が広がりやすい傾向があります。
受傷直後に症状がなくても、数日から数週間後に物忘れの悪化、歩きにくさ、ぼんやりするなどの変化が現れることもあります。
少しでも「様子がおかしい」と感じたら、早めに医療機関を受診することが重要です。
頭を打った時の対処法
頭を打った直後は無理に動かず安静にし、こぶや腫れがある場合はタオルで包んだ保冷剤などで冷やしましょう。
当日は飲酒や激しい運動、長時間の入浴は控えてください。
頭痛の悪化、吐き気・嘔吐、強い眠気、意識がもうろうとするなどの症状があれば、速やかに医療機関を受診することが大切です。

頭が切れている場合
頭が切れた場合は、清潔なガーゼやタオルを当てて直接圧迫し、まず止血します。
頭部は血流が多く、少ない傷でも出血が多く見えることがあります。
血がにじんでも途中でガーゼを外さず、その上から重ねて圧迫してください。
出血が止まらない、傷が深い、強い衝撃を伴う、意識の異常や吐き気がある場合は医療機関を受診しましょう。
意識がない場合
意識がない場合は、まず大声で呼びかけ、肩を軽くたたいて反応を確認します。
反応がなければすぐに救急要請を行ってください。
呼吸があるかを確認し、呼吸がなければ心肺蘇生を開始します。
呼吸がある場合は、嘔吐による窒息を防ぐため横向きに寝かせ、気道を確保しましょう。
無理に起こしたり揺さぶったりせず、頭や首をできるだけ動かさないよう注意します。
救急隊が到着するまで、呼吸や意識の変化を観察し続けることが重要です。
頭部外傷後に考えられる病気
頭部外傷後には、皮膚の損傷や脳震盪、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが考えられます。
受傷直後は症状が軽くても、時間の経過とともに頭痛の悪化や吐き気、意識障害、手足のまひなどが現れる場合があり、慎重な経過観察が重要です。

皮膚の損傷
皮膚の損傷には、擦り傷、切り傷、打撲による腫れやたんこぶなどがあります。
頭皮は血流が豊富なため、小さな傷でも出血が多く見えることが特徴です。
見た目が軽くても、傷が深い場合は縫合が必要になることがあります。
また、汚れたまま放置すると感染を起こす可能性もあるため、流水でやさしく洗い、清潔なガーゼで保護することが大切です。
傷口が大きく開いている、出血が止まらない、強い衝撃を伴う場合は、内部の損傷が隠れていることもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
脳震盪
脳震盪は、頭部に強い衝撃が加わることで一時的に脳の働きが乱れる状態を指します。
CTやMRIで明らかな異常が見つからないことも多いですが、受傷直後に意識を失う、ぼんやりする、受傷前後の記憶があいまいになるといった症状がみられます。
そのほか、頭痛、吐き気、めまい、集中力の低下などが続くこともあります。
多くは安静により回復しますが、繰り返すと重症化する可能性があるため注意が必要です。症状が続く、悪化する場合は医療機関を受診し、適切な評価を受けることが大切です。
外傷性くも膜下出血
外傷性くも膜下出血は、頭部に強い衝撃を受けたことで、脳を包む「くも膜」の下に出血が起こる状態です。交通事故や転倒などが原因となり、頭部外傷のあとに、頭痛、吐き気、意識障害などが現れることがあります。
出血量が少ない場合は症状が軽いこともありますが、出血が広がると命に関わる危険な状態になることもあります。
CT検査で診断されることが多く、安静や入院管理が必要になる場合もあります。
受傷後に激しい頭痛や意識の変化がみられた際は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、頭部に強い衝撃を受けた際に、脳を包む硬膜の下に出血が生じ、血液がたまる状態です。
交通事故や高所からの転落、激しい転倒などが原因となります。
受傷直後は意識がはっきりしていても、時間の経過とともに出血が広がり、強い頭痛、吐き気、意識障害、手足のまひなどが現れることがあります。
進行が早い場合は命に関わることもあり、緊急手術が必要になるケースもあります。
早期発見と迅速な治療が重要なため、頭を強く打った後に異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
急性硬膜外血腫
急性硬膜外血腫は、頭部に強い衝撃が加わった際に、頭蓋骨と硬膜の間に出血が起こり、血液が急速にたまる状態です。
特に頭蓋骨骨折を伴う場合に発生しやすく、交通事故や転倒が主な原因です。
受傷直後に一時的に意識を失い、その後いったん回復する「意識清明期」を経て、再び急激に意識が悪化することがあるのが特徴です。
頭痛の増強、吐き気・嘔吐、手足のまひ、瞳孔の左右差などが現れることもあります。
進行が早く命に関わるため、緊急手術が必要となる場合があり、迅速な診断と治療が極めて重要です。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、軽く頭を打ったあと数週間〜1か月以上たってから、脳を覆う膜の間に血液が溜まり脳を圧迫する疾患です。
頭痛、物忘れ、歩きにくさ、ぼんやりするなどの症状が出ることがあります。高齢者の方は、転倒歴を忘れていることもあるため注意が必要です。
脳挫傷
脳挫傷は、頭部に強い衝撃が加わることで脳の一部が損傷し、出血や腫れを伴う状態です。交通事故や高所からの転落、激しい転倒などが主な原因です。
脳が頭蓋骨の内側にぶつかることで損傷が起こり、受傷直後から意識障害やけいれん、強い頭痛、吐き気、手足のまひなどが現れることがあります。
損傷部位によっては言語障害や性格変化がみられる場合もあります。
症状は時間とともに悪化することもあり、入院による厳重な管理や場合によっては手術が必要になります。早期の診断と適切な治療が予後を大きく左右します。
頭蓋骨骨折
頭蓋骨骨折は、強い衝撃によって頭蓋骨にひびや割れが生じる状態です。
交通事故や高所からの転落、激しい転倒などが主な原因となります。
単純な線状骨折では症状が軽いこともありますが、骨がへこむ陥没骨折や、骨折部から出血や髄液が漏れる場合は重症です。
耳や鼻から出血、透明な液体が出る、強い頭痛や意識障害などがみられることもあります。
頭蓋骨骨折は頭蓋内出血を合併することも多いため、画像検査による確認が重要です。
強い衝撃を受けた場合は症状が軽くても医療機関を受診しましょう。
高次脳機能障害
高次脳機能障害は、頭部外傷などによって脳が損傷し、記憶・注意・判断・感情コントロールなどの高度な脳機能に障害が生じる状態です。
外見上は大きな後遺症がないように見えても、「物忘れが増えた」「集中できない」「段取りが組めない」「怒りっぽくなった」などの変化が現れることがあります。
本人が自覚しにくい場合も多く、周囲が違和感に気づくことも少なくありません。
社会復帰や仕事に影響することもあるため、専門的な評価とリハビリが重要です。
頭部外傷後に日常生活の変化を感じた場合は、医療機関へ相談しましょう。
脳神経外科
専門医/指導医
當銀 壮太
頭部外傷後は、「大丈夫そう」と感じていても油断は禁物です。
受傷直後は症状が軽くても、時間の経過とともに頭痛の悪化や吐き気、めまい、物忘れ、ぼんやりするなどの変化が現れることがあります。
少しでも違和感があれば受診しましょう。
CTやMRIなどの画像検査を行うことで、外からは分からない頭蓋内出血や脳の損傷を早期に発見できる可能性があります。
早期発見・早期治療が重症化を防ぐ鍵となります。不安を感じたら自己判断せず、医療機関へ相談することが大切です。
まとめ
頭部外傷は、見た目が軽くても内部で出血や脳損傷が進行している場合があります。
受傷後1〜2日は特に注意し、頭痛の悪化や吐き気、意識の変化などがあれば早めに受診することが大切です。
子どもや高齢者は症状が分かりにくいため、より慎重な観察が必要です。
少しでも違和感があれば自己判断せず、医療機関で検査を受けることで重症化を防ぎましょう。
お気軽にお問い合わせください
「これって受診したほうがいいのかな?」と迷う段階でも大丈夫です。
症状がはっきりしていなくても、不安や違和感があればご相談ください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。