椎骨動脈解離とは?後頭部・首の痛みの特徴と受診の目安を脳神経外科医が解説

突然の首の後ろや後頭部の痛みに不安を感じていませんか。椎骨動脈解離は早期の診断が重要とされる病気です。本記事では、痛みの特徴や受診の目安、治療と療養生活の注意点について、脳神経外科の視点からわかりやすく解説します。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。
椎骨動脈解離とは
椎骨動脈解離とは、首の後ろを通って脳へ血液を送る椎骨動脈の壁が裂け、血管の内側に血液が入り込む病気です。本疾患の全体像として、以下の3点が挙げられます。
- 椎骨動脈の場所と役割
- 解離が起こるしくみ(脳梗塞・くも膜下出血・痛みのみ)
- 発症しやすい人の特徴
後頭部や首の痛みから発症することが多く見られます。
椎骨動脈の場所と役割
椎骨動脈は、左右の頚椎の横突孔という骨のトンネルを通り、頭蓋骨の中へと入っていく太い血管です。頭蓋内で左右が合流して脳底動脈となり、生命維持中枢である脳幹や、体の平衡感覚を司る小脳、視野に関わる後頭葉へ血液を送っています。
可動性の高い首の骨に沿って走行している構造上、首を曲げたり反らしたりする物理的な動きの影響を直接受けやすい特徴があります。椎骨動脈の解離は、首の部分(頭蓋外)で起こる場合と、頭蓋内に入った部分で起こる場合があり、日本では頭蓋内での発症が多いとされています。
部位によって起こりうる合併症や治療方針が異なります。
解離が起こるしくみ
動脈の壁は内膜・中膜・外膜の3層で構成されています。何らかの負荷で内膜に亀裂が生じ、中膜との間に血液が入り込むことで血管壁が裂けていきます。
椎骨動脈解離では、主に以下のような病態がみられます。
- 脳梗塞を伴う場合:解離によって血管が狭くなったり閉塞したりすることで、脳への血流が不足する場合があります。また、解離した部位に形成された血栓が末梢へ流れ、脳梗塞を引き起こすこともあります。
- くも膜下出血を伴う場合:頭蓋内の椎骨動脈解離では、血管壁が破綻してくも膜下出血を引き起こすことがあります。発症早期の再出血に注意が必要です。
- 頭痛や首の痛みのみの場合:脳梗塞やくも膜下出血を伴わず、後頭部痛や頸部痛だけで発見されることもあります。ただし、発症後に血管の形状が変化する場合があるため、慎重な経過観察が必要です。
これらの病態は完全に独立しているわけではなく、経過中に血管の状態が変化することもあります。
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どんな人に多いのか
椎骨動脈解離は、一般的な動脈硬化による脳卒中とは異なり、若年者や働き盛りの世代に比較的多く見られる傾向があります。
頭部の動脈解離のなかでも椎骨動脈は解離が起こりやすい血管として知られており、性別では男性の割合がやや高い傾向にあるとされています。高血圧などの持病がない健康な方でも発症することがあり、首の骨格的な特徴や日常の動作、血管壁の脆弱性などが関与していると考えられています。
椎骨動脈解離の症状
椎骨動脈解離では、後頭部や首の後ろの痛みが初発症状となることがあります。片側に痛みが現れることが多いものの、両側に生じる場合もあり、痛みの強さや始まり方には個人差があります。
突然の激しい痛みだけでなく、比較的軽い痛みや徐々に強くなる痛みとして現れることもあるため、典型的な症状がないからといって否定できるわけではありません。
主な症状の現れ方は以下の通りです。
- 首筋から後頭部にかけての突発的な痛み
- めまいやしびれなどの脳梗塞の症状
- 経験したことのない激痛や嘔吐を伴うくも膜下出血の症状
痛みの性状には個人差があり、慎重な見極めが求められます。
痛みの特徴
椎骨動脈解離による痛みは、解離を起こした血管と同じ側の後頭部に限局して現れることが一般的です。首の後ろや片側、場合によっては両側の後頭部に突然の激しい痛みが突発し、数日間にわたって持続するケースが多く報告されています。
一方で、痛みの自覚には個人差が見られます。必ずしも典型的な激痛やズキズキした拍動痛ばかりではなく、「首を寝違えたような張り」「急に悪化した重い肩こり」のような鈍い痛みとして始まる方もいらっしゃいます。これまで経験したことのない後頭部や首の痛み、普段の肩こりや頭痛とは明らかに異なる痛みが現れた場合には、椎骨動脈解離も鑑別に挙げる必要があります。
鎮痛薬の効き方や痛みの強さだけで、椎骨動脈解離かどうかを判断することはできません。
脳梗塞を起こしたときの症状
解離によって血液の流れが滞ったり血栓が飛んだりして脳梗塞を併発すると、多彩な神経症状が現れます。代表的なものとして、周囲がぐるぐる回るような激しいめまいやふらつき、ろれつが回らない、水分や食事が飲み込みにくいといった症状が挙げられます。また、物が二重に見える複視や、片側の顔面・手足のしびれ、温痛覚の左右差などが現れることもあります。延髄外側に障害が及ぶとワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)を呈することがあります。
くも膜下出血を起こしたときの症状
解離した血管の外膜が裂けて動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を引き起こします。この場合、突然の激しい頭痛とともに、激しい吐き気や嘔吐、意識の混濁などを伴うことが特徴です。椎骨動脈解離によるくも膜下出血は、発症後早期に再出血するリスクが高いと考えられており、命に関わる事態を防ぐため直ちに救急車を要請し、高度な専門治療を開始する必要があります。
肩こり・緊張型頭痛・片頭痛との見分け方
日常的な肩こりや慢性頭痛との違いを整理することは、早期発見のために有用です。
| 項目 | 椎骨動脈解離 | 緊張型頭痛・肩こり | 片頭痛 |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 突然または徐々に出現 | 徐々に重くなる | 徐々に強まることが多い |
| 場所 | 主に片側の後頭部〜首 | 後頭部や首全体 | こめかみ周辺 |
| 片側か両側か | 片側に多い | 両側に多い | 片側または両側 |
| 経過 | 数日〜数週間持続 | 数十分から数日、慢性的な場合もある | 数時間〜数日で軽快 |
| 伴う症状 | 痛みのみの場合もある。脳梗塞では神経症状を伴う | 通常、強い吐き気や神経脱落症状はない | 吐き気、光・音への過敏など |
この表は一般的な傾向を示したものであり、症状だけで椎骨動脈解離と他の頭痛を確実に区別することはできません。特に、これまでに経験したことのない後頭部痛や頸部痛が新たに出現した場合には、片頭痛や肩こりと自己判断せず、医療機関で相談することが重要です。
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すぐに受診すべきサイン|救急車を呼ぶ目安と何科に行くか
激しい頭痛や神経症状がある場合は直ちに救急車を呼び、痛みだけの場合でも突然始まった首や後頭部の痛みであれば早めに脳神経外科を受診することが重要です。
救急車を呼ぶ目安(チェックリスト):
- 経験したことのない突然の激しい頭痛
- 激しいめまい、真っ直ぐ歩けないふらつき
- ろれつが回らない、手足の脱力やしびれ
- 視界が二重に見える、意識がもうろうとする
上記の症状が一つでもあれば、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。
脳神経外科
専門医/指導医
當銀 壮太
これらの症状がなく首や後頭部の痛みだけの場合でも、突然始まった痛みや、いつもと違う痛みが続くときは、できるだけ早く(可能であれば当日中に)脳神経外科または脳神経内科を受診してください。
椎骨動脈解離の原因
- 首に急な力がかかる日常動作や外傷
- 高すぎる枕の使用(殿様枕症候群)
- 血管リスクを背景とした原因不明の発症
原因が特定できないケースも少なくありません。椎骨動脈解離は、明らかなきっかけがない特発性のものから外力によるものまで様々です。
首に急な力がかかる動作
椎骨動脈解離は、明らかな外傷がなくても発症することがありますが、首の急激な回旋や伸展、外傷などが発症の契機となる場合もあります。
発症前にみられた動作や状況として、次のようなものが報告されています。
- 交通事故や転倒などによる頸部への外傷
- 首を急激にひねる、強く後ろへ反らす動作
- 頸部に強い力を加える徒手的な施術
- スポーツなどに伴う頸部への強い負荷
- その他、首に負荷がかかる日常動作
ただし、これらの動作をしたからといって必ず椎骨動脈解離が起こるわけではありません。また、発症前に特定の動作があった場合でも、それが直接の原因であったと断定できないことがあります。
一方、椎骨動脈解離による首の痛みを肩こりと考え、発症後にマッサージや整体を受ける場合も考えられます。新たに強い頸部痛が生じた際には、原因が明らかになるまで首に強い力を加える施術は避けてください。
高すぎる枕(殿様枕症候群)
睡眠時の姿勢と動脈解離の関連について、国立循環器病研究センターの研究グループによる症例対照研究(Egashira S, et al. European Stroke Journal 2024)で新たな知見が報告されています。
椎骨動脈解離の患者53例と対照群53例を比較したところ、高さ12cm以上の枕を使っている人は、解離を起こした群で多い傾向(オッズ比2.89)がみられました。15cm以上ではさらに強い関連が示されています。
同研究では、発症例全体の約1割が高い枕に関連していた可能性が示唆されています。
ただし、これは症例対照研究であり直接的な因果関係を断定するものではありませんが、首の過度な屈曲が血管への持続的な負担につながる可能性が考えられています。
はっきりした原因がない場合も多い
運動や施術などの明らかな契機がなく、日常生活の中で突然発症する特発性の椎骨動脈解離も数多く存在します。
椎骨動脈解離の発症には、血管壁の構造的な特徴や血圧など、複数の要因が関係していると考えられています。また、一部の患者さんでは、線維筋性異形成や結合組織疾患などが背景に存在する場合もあります。
ただし、一般的な動脈硬化による脳梗塞とは発症の仕組みが異なり、高血圧や喫煙だけで椎骨動脈解離の発症を説明することはできません。明らかな危険因子がない健康な方にも発症することがあります。
椎骨動脈解離の検査・診断
椎骨動脈解離の診断では、MRIやMRAを用いた迅速かつ正確な画像検査が基本となります。主な検査方法は以下の通りです。
- MRI・MRA検査(血管の形状変化と脳組織の評価)
- CT・3D-CTA・脳血管撮影(出血の確認や詳細な血管形態の把握)
- 症状持続時の再検査(時間経過による変化の追跡)
専門医による適切な画像判断が欠かせません。
MRI・MRA検査
MRI・MRAは、椎骨動脈解離の診断に重要な検査です。MRIでは脳梗塞の有無を確認でき、MRAでは椎骨動脈の狭窄、閉塞、拡張などの血管形態の変化を評価します。
椎骨動脈解離では、血管の狭窄と拡張が連続する「pearl and string sign(真珠と糸の徴候)」や、紡錘状の拡張、二重内腔などが認められる場合があります。
また、必要に応じて血管壁を詳しく評価するMRI撮像法を追加し、血管壁内血腫などの解離を示唆する所見を確認することもあります。
頭蓋内椎骨動脈の評価では、BPAS-MRIとMRAを組み合わせて血管の外径と内腔の変化を比較することが診断の参考になる場合もあります。ただし、BPAS-MRI単独で血管壁内血腫や剥離した内膜を直接確認できるわけではありません。
なお、発症早期や血管の変化が軽微な場合には、MRI・MRAだけで診断が確定しないこともあります。

CT・CTA・脳血管撮影
突然の激しい頭痛などからくも膜下出血が疑われる場合には、救急医療機関で頭部CTなどの検査を速やかに行います。
ただし、頭部CTで明らかな出血が認められない場合でも、発症からの時間や症状によっては、くも膜下出血を完全には否定できません。必要に応じて追加検査が検討されます。
造影CTを用いたCT血管撮影(CTA)は、椎骨動脈の狭窄や拡張、解離性動脈瘤などの血管形態を評価するために有用です。
また、診断が難しい場合や血管内治療などを検討する場合には、カテーテルを用いた脳血管撮影(DSA)が行われることがあります。
どの検査を優先するかは、症状の緊急性や出血の有無、医療機関の診療体制などによって異なります。
初回のMRIで異常が見つからないこともある
椎骨動脈解離では、発症早期の画像変化が軽微であったり、撮像方法によって血管の異常を十分に評価できなかったりする場合があります。
特に、通常の頭部MRIで脳梗塞が認められなくても、椎骨動脈解離そのものを否定できるわけではありません。血管を評価するMRAやCTAなどが必要となる場合があります。
また、解離した血管の形状は時間とともに変化することがあるため、初回検査で診断が確定しなくても、臨床的に疑いが強い場合には追加の画像検査や再検査を検討します。
ただし、すべての患者さんに頻回の画像検査が必要なわけではありません。症状や初回の検査所見に応じて、適切な検査方法と時期を判断することが重要です。
椎骨動脈解離の治療
椎骨動脈解離の治療方針は、痛みのみか、脳梗塞やくも膜下出血を伴っているかによって大きく分かれます。
| タイプ | 主な治療法 | 治療の目的 |
|---|---|---|
| 痛みのみ | 血圧などの全身管理、症状に応じた鎮痛、画像による経過観察 | 血管への負荷軽減と自然修復 |
| 脳梗塞を伴う | 脳梗塞の急性期治療、病態に応じた抗血栓療法など | 血栓形成と再発の予防 |
| くも膜下出血を伴う | 血管内治療、開頭手術 | 動脈瘤の再破裂防止 |
病態に応じた慎重な判断が行われます。
痛みだけの場合|慎重な経過観察と血管の状態に応じた管理
脳梗塞やくも膜下出血を伴わず、後頭部痛や頸部痛のみで発見された椎骨動脈解離では、血管の形状や狭窄の程度、解離が生じている部位などを評価し、治療方針を判断します。
脳梗塞や出血を伴わない場合には、鎮痛薬などによる症状の緩和や血圧を含む全身管理を行いながら、画像検査で血管の変化を確認することがあります。
高血圧が認められる場合には適切な血圧管理が重要ですが、すべての患者さんに厳格な降圧が必要というわけではありません。血圧を過度に下げると、血管の狭窄が強い場合などには脳への血流が不足する可能性もあるため、血管の状態に応じた管理が必要です。
脳梗塞を伴う場合|急性期治療と抗血栓療法
椎骨動脈解離によって脳梗塞を発症した場合には、脳梗塞の重症度や発症からの時間、血管の状態などに応じて治療を行います。条件を満たす場合には、血栓溶解療法や血栓回収療法などの急性期治療が検討されることもあります。
また、脳梗塞の再発を防ぐために、抗血小板薬や抗凝固薬などの抗血栓療法が検討されます。
ただし、抗血栓療法の考え方は、頭蓋外の椎骨動脈解離と頭蓋内の椎骨動脈解離で異なります。頭蓋外の頸部動脈解離については、抗血小板薬と抗凝固薬を比較した臨床試験や観察研究が行われていますが、どちらを優先すべきかについては、患者さんの病態に応じた個別の判断が必要とされています。
一方、頭蓋内椎骨動脈解離では、くも膜下出血などの出血リスクにも注意が必要であり、頭蓋外解離の研究結果をそのまま当てはめることはできません。抗血栓薬の使用は、出血の有無や血管形態などを踏まえて慎重に判断します。
くも膜下出血を伴う場合|緊急の専門的治療
頭蓋内椎骨動脈解離によってくも膜下出血を発症した場合には、早期の再出血リスクが高いため、速やかな専門的治療が必要です。
治療には、カテーテルを用いた脳血管内治療や外科的治療などがあり、解離した血管の部位、左右の椎骨動脈の発達状況、そこから分岐する血管などの位置関係を考慮して治療方法を選択します。血管内治療では、病変を含む血管を閉塞する方法や、血流を温存しながら治療する方法などが検討されます。
いずれの場合も、再出血を防ぎながら脳幹や小脳への血流を保つことが重要であり、脳血管治療を専門とする医療機関での対応が必要です。
治るまでの期間と経過観察
椎骨動脈解離は、適切な管理のもとで自然に修復されることも多い病気ですが、その経過は定期的な画像検査で慎重に追う必要があります。治癒と経過観察のポイントは以下の通りです。
- 血管壁の自己修復による改善傾向
- 画像評価に基づく個別の通院計画
- 合併症の有無に応じた後遺症の見通し
焦らず段階的に状態を確認していく姿勢が大切です。
自然に修復されることも多い
椎骨動脈解離では、時間の経過とともに血管の狭窄や壁内血腫などが改善し、血管の状態が安定していく場合があります。
ただし、すべての症例で血管が元の形に戻るわけではありません。狭窄や拡張が残存する場合や、経過中に血管形態が変化する場合もあります。
特に頭蓋内椎骨動脈解離では、脳梗塞やくも膜下出血を伴っていなくても、病変の形状や経過によって慎重な管理が必要です。
症状が改善したことだけで血管の修復を判断することはできないため、主治医の方針に従って画像検査による経過観察を行うことが重要です。
経過観察中の検査と通院
椎骨動脈解離では、症状が改善した後も血管の状態が変化することがあるため、画像検査による経過観察を行うことがあります。
MRI・MRAなどで血管の狭窄や拡張、改善の程度などを確認します。検査の時期や頻度は一律ではなく、発症後1か月や数か月後などに検査を行うこともあります。症状や血管の状態に応じて、主治医が検査時期や観察期間を判断します。
再発・後遺症について
椎骨動脈解離の予後は、脳梗塞やくも膜下出血の有無、障害された脳の部位、血管の状態などによって異なります。頭痛や頸部痛のみで発症し、脳梗塞やくも膜下出血を伴わない場合には、後遺症を残さず回復する方も多くいらっしゃいます。
一方、脳幹や小脳の脳梗塞を合併した場合には、めまいやふらつき、手足の麻痺、感覚障害、飲み込みにくさなどの後遺症が残ることがあります。
また、椎骨動脈解離の再発は比較的少ないと考えられていますが、別の血管に新たな解離が生じる場合もあります。経過観察の期間や方法については、病変の状態や患者さんの背景に応じて判断します。
日常生活の注意点|仕事・運動・入浴はいつから?
診断後や退院後の日常生活において、仕事への復帰や運動の再開時期は誰もが気になる疑問です。日常生活における基本的な考え方は次の通りです。
- 首に急な負荷がかかる動作を避けること
- 仕事や運動の再開時期は主治医と相談して決めること
- 家庭血圧の測定と禁煙を徹底すること
自己判断での制限解除は避け、画像所見をもとに段階的に進めます。
解離がわかった後に避けたい動作
椎骨動脈解離と診断された後は、特に発症早期において、首に強い力がかかる動作や激しい運動を避けることが勧められます。具体的には、以下のような動作に注意が必要です。
- 首を急激にひねる、強く後ろに反らす動作
- 首に強い力を加えるマッサージや整体などの施術
- 頸部への衝撃を伴うスポーツ
- 重い物を持ち上げるなど、強い力みを伴う運動
一方、日常的な首の動きやデスクワークなどについては、すべての患者さんに一律の制限が必要なわけではありません。
また、入浴やサウナなどについても、血圧や全身状態、発症からの経過に応じて判断します。どの程度の活動を控えるべきか、いつから再開できるかについては、主治医に確認してください。
仕事・運動を再開するときの考え方
仕事や運動の再開時期は、画像検査で血管が安定しているか、血圧が管理できているか、症状が消失しているかを基準に主治医が判断します。
主治医に確認すべきポイント:
- デスクワーク:自覚症状が落ち着いていれば比較的早期に再開できる場合がありますが、首を前屈させた長時間の姿勢を避け、適度に休憩をとります。
- 力仕事:重い物を持つ作業は血圧が急上昇するため、画像の安定が確認できるまで制限されることがあります。
- スポーツ:散歩など軽い運動から始め、球技やゴルフなどは段階的に許可を得ます。
血圧の管理と禁煙
椎骨動脈解離と診断された後は、血圧を含む全身状態の管理が重要です。
高血圧がある場合には適切な治療を行い、必要に応じて家庭血圧を測定しながら、主治医と管理目標を相談します。ただし、椎骨動脈解離に対して、すべての患者さんに共通する厳格な降圧目標が確立しているわけではありません。
また、喫煙は脳血管疾患全般の健康リスクを高めるため、禁煙が勧められます。日常生活では、無理のない活動と規則正しい生活を心がけ、血管の状態に応じて主治医の指示に従うことが大切です。
予防のためにできること
椎骨動脈解離を確実に予防する方法は、現時点では確立していません。
日常生活では、首に強い衝撃を与える行為や、無理な回旋・伸展を伴う動作を避けることが望ましいと考えられます。また、極端に高い枕と椎骨動脈解離との関連を示唆する研究もありますが、枕の高さを調整することで発症を予防できると証明されたわけではありません。
高血圧などの持病がある場合には適切に管理し、禁煙などの一般的な健康管理を心がけましょう。ただし、これらの対策によって発症を完全に防げるわけではありません。これまでに経験したことのない後頭部痛や頸部痛が現れた場合には、早めに医療機関で相談することが大切です。
まとめ
椎骨動脈解離は、首の後ろを通る重要な血管が裂ける病気であり、働き盛りの方にも突然起こり得る脳血管疾患です。
重要なポイントをまとめると以下の4点になります。
- 緊急性の高いサインを見逃さない
突然の激しい頭痛とともに、めまいやふらつき、ろれつが回らない、手足のしびれなどの神経症状が現れた場合は、くも膜下出血や脳梗塞の疑いがあるため直ちに救急車を呼んでください。 - 痛みだけでも早めに専門医へ受診する
「何時何分からとわかる突然の痛み」「片側の首の後ろから後頭部にかけての持続する強い痛み」を感じたときは、自己判断で肩こりや通常の頭痛と片付けず、早めに脳神経外科でMRI・MRA検査を受けましょう。 - 血管の状態に応じた経過観察が重要
脳梗塞やくも膜下出血を伴わない椎骨動脈解離では、時間の経過とともに血管の状態が改善する場合があります。ただし、すべての症例で自然に元の形へ戻るわけではありません。血管の狭窄や拡張の程度、頭蓋内・頭蓋外の別などに応じて、適切な管理と画像検査による経過観察が必要です。 - 生活制限の解除は主治医と相談して進める
首を急にひねる動作や力仕事を避け、仕事や運動の再開は画像上の安定を確認しながら段階的に判断してください。
首や後頭部の違和感が続くときは、放置せず専門医療機関へのご相談をお勧めします。
よくある質問
椎骨動脈解離に関する代表的な疑問についてお答えします。本疾患は発症初期の症状や治癒までの経過に個人差が大きく、治療方針や療養生活の過ごし方について多くの方が不安を抱いています。特に「自然に治るのか」「後遺症は残らないか」「急変時のサインは何か」といった疑問は頻繁に寄せられます。自己判断による判断の遅れを防ぎ、安心して治療に向き合っていただけるよう、医学的な根拠に基づきわかりやすく整理して解説いたします。
椎骨動脈解離では、時間の経過とともに血管壁内の血腫が吸収され、血管の狭窄などが改善する場合があります。特に脳梗塞やくも膜下出血を伴わない症例では、保存的な管理によって状態が安定することもあります。
ただし、すべての症例で血管が完全に元の形へ戻るわけではなく、狭窄や拡張が残る場合もあります。また、経過中に血管の状態が変化する可能性があるため、自己判断で放置することは避けてください。
画像検査の時期や頻度は、血管の状態や症状に応じて主治医が判断します。
椎骨動脈解離による後遺症の有無は、発見された時点で脳梗塞やくも膜下出血を併発していたかどうかに大きく左右されます。
血管が裂けたことによる「首や後頭部の痛みのみ」の段階で早期に医療機関を受診し、適切な血圧管理や安静によって合併症を防ぐことができた場合は、多くの方が後遺症を残すことなく普段通りの社会生活や仕事へと復帰されています。
一方で、血管が閉塞して小脳や脳幹に脳梗塞を合併してしまった場合や、血管瘤が破裂してくも膜下出血を起こした場合には、障害を受けた脳組織の部位や範囲に応じて、めまい、歩行のふらつき、手足の麻痺やしびれ、飲み込みにくさ、構音障害などの後遺症が残ることがあります。重篤な合併症の早期発見と適切な治療のためには、椎骨動脈解離が疑われる症状が現れた段階で、速やかに脳神経外科を受診することが重要です。ただし、早期に受診すれば必ず後遺症を防げるというわけではなく、予後は脳梗塞やくも膜下出血の有無、病変の状態などによって異なります。
椎骨動脈解離と診断された後に、突然の激しい頭痛、急激なめまいや歩行障害、ろれつが回らない、手足の麻痺やしびれ、物が二重に見える、飲み込みにくい、意識がもうろうとするなどの症状が現れた場合には、脳梗塞やくも膜下出血などの可能性があります。
これらの症状が新たに現れた場合には、夜間や休日であっても直ちに救急車(119番)を要請してください。
また、これまでの痛みが明らかに悪化した場合や、新たな後頭部痛・頸部痛が現れた場合にも、速やかに医療機関へ相談することが重要です。

お気軽にお問い合わせください
「これって受診したほうがいいのかな?」と迷う段階でも大丈夫です。
症状がはっきりしていなくても、不安や違和感があればご相談ください。
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/指導医
當銀 壮太
南武線鹿島田駅から徒歩5分のかしまだ頭痛 脳神経クリニック院長。「頭の悩みを気軽に相談できる場所を作りたい」という想いから、川崎市幸区にクリニックを開院。地域中核病院にて、脳血管障害や頭部外傷、脳腫瘍への専門的治療(開頭手術・カテーテル治療・化学療法)に幅広く従事。その豊富な臨床経験に基づき、患者様一人ひとりに最良の医療を提供することに尽力している。